ひかりクリーナーの性能について
定量的な実証試験はホルムアルデヒドガスなどの分解について測定を行っており、
確かな分解挙動が確認されています。
開発当初は、下水の臭いが上がってきて吐きそうな臭いに長年苦しめられていた100平米の実験室で、
配水管にテープで封をしておけば換気無しで3時間ほどでほとんど臭いがなくなっていたことから、
効果を確信していました。
市販の小型光触媒空気清浄機では、非常に小さい光触媒と紫外線ランプを使用していますが、
大面積にして、可視光でも強度を高めることで極めて安価に実用化しました。
ファンは大型で信頼性が高く、普通のデスクトップパソコンより静かです。
現在のモデルでは、1200rpm, 14dB のファンを使用しています。
ノイズが許容できる環境では、風量の大きなファンを使えばより高性能化が可能です。
現在生産中の 30mm ネジを足に使ったモデルでは、LED から 2.5cm の距離にフィルターがあり、この位置での光の照度は 68,500 lux にも達するという計算になりました。
(以前は40mmのネジを足に使っており、LED から 2.5cm の距離にフィルターがあり、この位置での光の照度は、58,000 luxでした)
なお、光が強すぎて、レンジの広い 40,000 lux まで測れる照度計でもレンジオーバーしたため、距離を変えて測定し、逆二乗則からフィッティング、2cm位置での強度を求めました。
本当にこんな簡単な構造の装置で効果があるのか、
開発初期に検証を行った結果をしたのリンクにまとめました。
煙を吸い込む挙動も、動画で紹介していますので、
どの程度の範囲の飛沫を吸い込むかの参考になるのでは無いかと思います。
ひかりクリーナー 性能試験結果(初期の頃の検証結果)
上のグラフは、38L アクリルデシケーター中でのホルムアルデヒド分解挙動です。
(実際の部屋での挙動とは異なります。)
ホルムアルデヒド濃度測定はホルムアルデメーター htV-m (PPM technology 社)を使用し、真空ポンプでシリカゲルカラムを通じた乾燥空気に置換して湿度条件を一定とし、
パラホルムアルデヒドの入った瓶を湯煎することで純度の高いホルムアルデヒドガスを生成し、シリンジにとってチャンバーに注入しています。
不織布を使用した標準機でも確実にホルムアルデヒドの分解が見られ、
さらに無機材質のメッシュに大量の可視光応答型の光触媒を塗布した高性能フィルターを使用すると、比較にならないほど高性能になっていることが分かります(高性能フィルターにはそれ以外にも様々なノウハウが投入されて高性能化を達成しています)。
また、消費電力を落とした2021型でも、標準型より遙かに高性能であることが分かります。
図中の凡例に記されている k 値は反応速度定数で、ブランクと標準機は時間 t に対してホルムアルデヒド濃度 = a・exp(-k1×t) + b・exp(-k2×t) という二つの反応速度定数で曲線的に、
無機材質フィルターは a・exp(-k×t) という一つの反応速度定数で直線的に表されています。消費電力を落とした2021型でも標準型フィルターの22.9倍、標準機+高性能フィルターでは52.1倍の反応速度定数となっています。
式の形の違いについては現在解析中ですが、不織布フィルターは有機物である自分自身を分解してセンサーが反応する別のガスを生成している可能性があります。
(2020/09/17)
ひかりクリーナーが飛沫を除去する様子を可視化しました!
空気中の微粒子を可視化する特殊動画撮影を、
カトウ光研 本社に於いて、
2020/09/15 に実施致しました。
COVID-19対策特設ページ 飛沫・エアロゾルの可視化とは
http://kk-co.jp/use/aerosol.php
静止画ではうまくお伝えできないのですが、1m 程度の範囲に於いて、
口から発声に伴って出た飛沫や、スプレーからの模擬飛沫、エアロゾルを模した電子タバコのベーパー
などが吸い込まれていき、なおかつフィルターによってマスクと同じように
止められていることが確認出来るかと思います。
発声に伴う飛沫の撮影に際しては、「ブーブー」と言う破裂音により
意図的に大量の飛沫を出しています。
(9/24 コマ送りの飛沫の画像を重ね合わせて動きが分かるようにしました)
ファン無し
ファン無し_やや遠く
ひかりクリーナー_飛沫
ひかりクリーナー_飛沫_やや遠く
ひかりクリーナー_飛沫_拡大
ひかりクリーナー_スプレー_拡大
ひかりクリーナー_煙
ひかりクリーナー_煙_拡大
今回の撮影のうち、拡大画像と煙の画像は直線状に発信するレーザー光を用いて撮影しており
(机の上に直線状の光が見えます)、
空間の中のある一面を通過する粒子を捉えた断面画像のようになっています。
拡大した画像の撮影の際には、ファンの下側にもレーザーが回り込むように設定しており、
ファンの後ろ側の粒子では無く、ファンの直下の粒子を捉えています。
口から及びスプレーからの飛沫が高い割合でフィルターで止められていることが確認できるかと思います。
(わずかにこぼれ出てくる飛沫も見られることから、レーザーが当たって無くて見えていないだけ、
と言うわけでは無いことが分かります)
さらに驚くべき事にエアロゾルについてもかなりの割合で捕集しています。
使用している不織布は肉眼で見える程度の穴が空いた構造になっており、
予想以上の効果だと考えています。
もちろん、周囲の空間の飛沫やエアロゾルを全て吸い込むブラックホールのような装置ではありません。
スプレーからの大きく早い飛沫にはあまり効果が無いことから、
くしゃみなどのしぶきには期待できませんが、今そう言うことをされる方は少ないかと思います。
ファンの周辺部では巻き込みや逆に吹き上げが起こっていることも確認されており、今後改善の対象となります。
ですが 会話をする程度の距離の人と人の間の飛沫を一定の割合で低減する
ことはご理解頂けたかと思います。
今回の撮影結果だけで飛沫が除去できたと言えたわけでは無く、
この内容を論文としてまとめて第三者のチェック(査読)を受けた上で、
出版を認められて初めて確認が出来たことになります。
また、今回の飛沫のキャッチには光触媒は全く関係なく、
単なる「外付けのマスク」としての機能の確認に留まります。
今後、キャッチした飛沫に含まれているウイルスをきちんと分解、不活化できていることの確認を行って、
システム全体の検証となります。
今回は、その第一段階、と言えます。
パーティクルカウンターも購入したため、何らかの定量的データも出したいと考えています。
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(2020/12/26)
人と人の間に設置して飛沫を防ぐコンセプトで開発を進めている
ひかりクリーナーですが、
特殊動画撮影での吸い込みの様子の可視化に加えて、
パーティクルカウンター(AeroTrack 9303)
を用いたフィルター性能の定量的評価を行いました。
測定は、2分間の測定を10回、フィルターの上流側、下流側 12cm の位置で、
それぞれ測定しました。
測定用のダクト側面
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ファン、フィルター上流側にパーティクルカウンターのプローブを設置した様子
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クリーンベンチ内で、超音波加湿器を使用してフィルター性能をテストしている様子
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パーティクルカウンターによるフィルター性能の測定結果。
HEPAフィルターを使用したクリーンベンチ内では、
5μm以上の粒子はほぼゼロとなっていましたが、
ダクトを使用して吸気を行った結果、上部に設置した HEPA フィルターの気流を
側面に流す隙間から外気を吸い込んでしまい、かなり粒子数が多い状態となりました。
このため、「目張り無しクリーンベンチ内」の測定結果は、
大気中に漂う一般的な埃に対するフィルター性能という事になります。
周囲を目張りし、ダクト下流側のみ解放すると、かなりクリーンな環境となりました。
(「目張りしたクリーンベンチ内」)
この状態で、ダクト上流側に超音波加湿器を設置して噴霧させました。
水を噴霧することで口から飛び出す飛沫、エアロゾルを模擬しています。
1回目は斜め及び上方に設置されたデュアルノズル両方から、
2,3回目は斜めに設置されたノズルのみを使用しています。
フィルターは一般的な拭き取り用の不織布一枚で、
余り高い性能は期待していませんでしたが、
5μm以上の飛沫はほぼ完全にキャッチできている
ことが明らかになりました。
その一方で1μm以下の粒子はほとんどキャッチできておらず、
素通りに近いことも明らかになりました。
(空気中の埃などは、形状の違いからか1μm以下の粒子もそれなりにキャッチされていますが、
今回問題となっているのは液滴ですので、今回の測定結果がより近い結果と言えます)
一般的に、5μm以下の粒子をエアロゾルと呼んでいますが、
比較的大きな1〜5μmの粒子は半分程度キャッチできる物の、
完全ではありません。
ただし、光触媒はさらに小さい有機ガスの気体分子(1nm以下)をも分解していますので、
素通りというわけでは無く、中に含まれているウイルスに影響を与えていると考えられます。
この点については今後も継続して検証を行っていきます。
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(2021/12/03)
既に論文が受理されていますので、パーティクルカウンターを用いて空間中を飛散する飛沫の除去性能評価結果を公開致します。
風速0.6m/s程度のクリーンベンチ内に設置した噴霧器からの水道水の液滴を、下流側に設置したパーティクルカウンターで測定しました。噴霧器と測定器の直線上にひかりクリーナーを設置して、使用の有無でどの程度液滴が減少するかを評価しました。液滴は斜めに噴射され、40cm程度の高さで水平に飛行しています。
噴霧器からの距離50cm 及び 70cm の位置にパーティクルカウンターを設置し、粒子数の高さ依存性を評価しています。
いずれの距離でも、5.0〜25μmの粒径の大きな「飛沫」は、飛沫除去装置の作動によって着席時の顔の高さである40cm程度の高さでは大幅に減少することが確認できました。
0.3〜1.0μmのエアロゾルは測定可能な粒子数を超えており評価できていませんが、別途粒子数を落とした測定でも減少は見られませんでした。その間の1.0〜5.0μmのエアロゾルについては1桁程度の減少が見られました。
この結果と、フィルターの透過性能試験結果と併せて、ひかりクリーナーによりエアロゾルの除去は出来ないが、大きく大量のウイルスを含んでいる可能性のある「飛沫」については効果的に除去が可能であると言うことが出来ます。
エアロゾルの除去は出来ませんが、その中に含まれているウイルスの不活化は期待できるため、
KISTEC の抗菌・抗ウイルス性能評価サービスに依頼して、チャンバー内に噴霧したウイルスの除去性能評価を実施しています(2022/02/14 公開)。
パーティクルカウンターによる飛沫除去性能試験レイアウト。
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問い合わせ:e-mail: akiyoshi-masafumi@omu.ac.jp
もしくは supackey@gmail.com
(@は全角となっていますので、半角に置き換えて下さい)
電話でのお問い合わせは業務に大きな支障が出ますので、
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コロナウイルスに対する工学的対策についての考察
秋吉 優史 研究紹介ページ